環境問題への関心が高まる近年、住宅業界でも省エネや環境負荷の低減が求められています。そのなかで注目を集めているのがLCCM住宅です。LCCM住宅は、住友林業や積水ハウスなどの大手ハウスメーカーでも取り扱われています。
しかし、LCCM住宅とは具体的にどのような住宅なのか、またZEHとの違いや補助金の条件を詳しく知りたい方も多いでしょう。
このコラムでは、LCCM住宅の基本概要から補助金の条件、ZEHとの違いまでを詳しく解説します。このコラムで、未来の住まい選びに役立つ知識を得ることができます。それではLCCM住宅について学んでいきましょう。
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LCCM住宅の基本概要

LCCM住宅(ライフ・サイクル・カーボン・マイナス住宅)は、住宅のライフサイクル全体の二酸化炭素排出量をマイナスにすることを目指した住宅です。
住宅のライフサイクルとは、建設から居住中、解体・廃棄時までの全体をさします。LCCM住宅は、ライフサイクルすべての段階で環境負荷を最小限に抑える地球にやさしい住宅です。
各段階ごとのCO2排出量を削減する主な工夫を表にまとめました。
建設時のCO2排出量を削減する工夫 | ・国産木材などの環境にやさしい建材の使用 ・国産建材を選ぶなどして輸送距離を短縮 |
居住中のCO2排出量を削減する工夫 | ・高断熱、高気密の構造 ・高性能断熱外皮や換気設備などの高効率な設備 ・太陽光発電システムなどの再生可能エネルギーの活用 |
解体・廃棄時のCO2排出量を削減する工夫 | ・解体・廃棄時のCO2を最小限に抑える設計や技術を採用 ・リサイクル可能な素材の使用 |
このように、LCCM住宅は環境への配慮を住宅全体でおこなうことで、持続可能な社会の実現を目指すものです。さらに、光熱費が削減できて年中過ごしやすいなど、居住者にとっても多くのメリットがあります。

LCCM住宅に適用できる補助金

LCCM住宅の建築には、国や自治体からの補助金が利用できる可能性もあります。ここでは、補助金の種類や条件、申請手順を解説します。
補助金の種類と条件【2025年度】
LCCM住宅の建築には、国土交通省の「サステナブル建築物等先導事業(省CO2先導型)」という事業の補助金を利用できます。過去には「LCCM住宅整備推進事業」と呼ばれていました。
2025年度の「サステナブル建築物等先導事業」の詳しい情報は、執筆時点(2025年5月時点)では公開されていません。しかし、すでに事業者向けの補助金事業は開始されているので、今後個人向け補助金事業も開始される可能性は高いです。
参考として、令和6年度(2024年度)は設計費と工事費用の一部の1/2が補助されました。最大140万円まで補助されるのでぜひ活用したい制度です。
この補助金を受けるための主な条件は以下のとおりです。
- 戸建て住宅の新築・購入であること
- ZEH住宅の基準を満たすこと
- 再生可能エネルギーの導入や高効率設備を使用すること
- 住宅の立地が「土砂災害特別警戒区域」に該当しないこと
- 住宅の立地が「災害危険区域」に該当しないこと
ただし、補助金の条件や金額は年度によって変更される場合もあります。最新の情報を確認するようにしましょう。
補助金の申請手順
「サステナブル建築物等先導事業」補助金の申請は、住宅を建設するハウスメーカーや工務店(住宅供給事業者)がおこないます。
施主は、業者に家づくりの相談をする段階で「補助金を活用してLCCM住宅を建てたい」と伝えなければなりません。
申請の流れとしては、まずLCCM住宅の認定基準を満たす設計を行い、必要な書類を準備します。その後、住宅供給事業者が窓口へ申請書類を提出します。申請が受理され、審査を経て承認されると、補助金が交付される流れです。
申請手続きには専門的な知識が必要なので、ハウスメーカーや工務店と相談しながら家づくりを進める必要があります。

LCCM住宅とZEHとの違い

LCCM住宅とよく混同されるものにZEH(Net Zero Energy House)があります。両者の違いを簡単にいうと、LCCM住宅のライフサイクルのうち、居住中の省エネ・創エネ基準を満たした住宅がZEHです。ここでは、LCCM住宅とZEH住宅の違いについて詳しく解説します。
目指す環境性能のレベルの違い
LCCM住宅は、住宅のライフサイクル全体でCO2排出量をマイナスにすることを目指しています。一方、ZEHは居住中の年間一次エネルギー消費量をゼロにすることが目標です。LCCM住宅のほうがZEHに比べて包括的に環境保全に考慮した住宅であり、より省エネ性能の高い住宅という位置づけです。
LCCM住宅は居住中を含め、建設時や解体・廃棄時に至るまで高い環境性能を追求しています。その居住中のCO2排出量をマイナスにする工夫として、ZEH基準を満たすことが含まれています。

ZEHの条件は次のとおりです。
- 強化外皮性能基準(UA値)が0.6~0.4以下(地域ごとに異なる)
- 基準一次エネルギー消費量を20%以上削減
- 再生可能エネルギーを導入
- 上記3つにより基準一次エネルギー消費量から100%削減
ZEHの基準を満たすかどうかは判断が難しいので、設計の段階で業者に「ZEH住宅を建てたい」と伝えておくとよいでしょう。また、基準一次エネルギー消費量を30%以上削減するなど、ZEHよりもさらに省エネ性能の高いZEH+というモデルもあります。
設計と材料選定の違い
設計時や建材の選び方についても違いがあります。
LCCM住宅では、建設時のCO2排出量の削減も意識しなければなりません。そのため、環境負荷の低い材料の選定や長寿命化を考慮した設計が求められます。具体的には、リサイクル可能な素材の使用やメンテナンス性を高める工夫などです。
一方、ZEHでは高断熱・高気密の性能を満たすための材料選定は重視されますが、建設時や廃棄時の環境負荷はLCCM住宅ほど厳密には問われません。
取得できる認定制度の違い
LCCM住宅とZEHとでは、関連する認定制度にも違いがあります。
ZEHは「ZEHビルダー/ZEHプランナー」といった認定制度があり、これらの認定を受けた業者による施工であることが、施主や購入者が補助金を受け取れる条件のひとつです。
一方、LCCM住宅は一般社団法人住宅・建築SDGs推進センター「LCCM住宅認定」を取得できます。この認定もハウスメーカーなどの業者が申請をおこないます。また、「CASBEE評価」という制度がLCCM住宅の評価に活用されることもあります。
補助金の種類と条件【2025年度】
ZEH住宅の建設にも補助金制度があります。主な事業としては、SII(一般社団法人環境共創イニシアチブ)の「戸建住宅ZEH化等支援事業(ZEH補助金)」があげられます。
この補助金は、ZEH住宅の新築や購入に対して、戸建て住宅の場合1戸あたり55万円以上の補助が受けられる制度です。なお、補助金を受けるにはZEHビルダーとして認められた業者で新築・購入する必要があります。
ZEH補助金の種類と金額を以下にまとめました。
事業種類 | 対象 | 金額(1戸あたり) |
ZEH支援事業 | ・新築戸建住宅を建築・購入する個人 ・新築戸建住宅の販売者となる法人 | ・ZEH:55万円 ・ZEH+:90万円 |
高層ZEHーM支援事業 | 住宅用途部分が6層~20層のZEH-M | 補助対象経費の1/3以内 最大40万円 (ハイグレード仕様の場合50万円) |
中層ZEHーM支援事業 | 住宅用途部分が4層~5層のZEH-M | 40万円 (ハイグレード仕様の場合50万円) |
低層ZEHーM支援事業 | 住宅用途部分が1層~3層のZEH-M | 40万円 |
この他、特定の設備導入で追加の補助が受けられる場合もあります。詳しくはSIIの公式サイトをご確認ください。
ただし、この制度はLCCM住宅の補助金として紹介した「サステナブル建築物等先導事業」とは併用できません。どちらを利用したほうがよいかハウスメーカーと相談しましょう。

まとめ

LCCM住宅は、建設時から解体・廃棄時までのライフサイクル全体でCO2排出量をマイナスにする高い環境性能を持つ住宅です。補助金制度の活用で、初期費用の負担を軽減しつつ、環境にやさしい住まいを手に入れることができます。
また、LCCM住宅はZEHという住宅基準とも混合されやすいです。ZEHは居住中のエネルギー収支をゼロにする住宅ですが、LCCM住宅は建設時や解体・廃棄時の環境負担も考慮しています。LCCM住宅のほうがより高い省エネ性能や環境性能を持っているといえるでしょう。
LCCM住宅は、快適な住環境と地球環境への貢献を両立した住宅です。
LCCM住宅の導入には家の新築や購入が必要ですが、エコまるならいまの家に導入できる環境にやさしい設備をご提案できます。太陽光発電や蓄電池、エコキュート(自然冷媒ヒートポンプ給湯機)などの施工実績も豊富です。ご興味がある方はぜひ一度お問い合わせください。