家庭用蓄電池の仕組みは?停電時や太陽光発電との連携方法も紹介

近年、光熱費の高騰や災害対策への関心が高まるなか、家庭用蓄電池が注目を集めています。家庭用蓄電池とは、電気を蓄えられる二次電池(充電池)のことです。太陽光発電に加え、蓄電池を導入することで、発電した電力をためて効率的に使うことができます。
しかし、「家庭用蓄電池ってなに?」「どういう仕組みで電気がたまるの?」など、仕組みや活用方法がわからない方も多いかもしれません。
このコラムでは、家庭用蓄電池の基本的な仕組みや種類などをわかりやすく解説します。また、非常時に活用するポイントから太陽光発電と併用するメリット、最新技術や今後の見通しまで紹介するので、蓄電池の導入を迷っている方はぜひ参考にしてください。
このコラムを読めば、家庭用蓄電池の仕組みへの理解を深めることができるでしょう。
家庭用蓄電池とは?基本的な仕組み・知っておきたいこと

まずは、家庭用蓄電池の基本的な仕組みと知識を解説します。家庭用蓄電池とは、電気を蓄えられる二次電池(充電池)のことです。家庭用蓄電池の基本的な仕組みや、導入する前に知っておきたいポイントを確認しましょう。
電気をためて必要なときに使用できる装置
家庭用蓄電池は、電気を蓄えられる二次電池(充電池)のことをいい、蓄えた電力は必要なときに使用できます。
もっと具体的にいうと、主に太陽光発電で発電した電力をためられる装置です。蓄電池にためた電力は、消費電力が発電量を上回ったときや夜間など発電されないときに放電して使用できます。
家庭用蓄電池のメリットは、発電した電力をより効率的に活用できる点です。効率的に活用できることで、電気代を節約することができます。例えば、ためた電力を電気代が高い時間帯に使用すれば、買電量を抑えられて節約につながるでしょう。
特に3~5月などの発電量が多い時期は、日中にたくさんの電気を蓄電池にためられるので買電電気量を抑えやすいです。このように家庭用蓄電池は、電力を効率的に利用できて経済的なメリットのある装置といえます。
家庭用蓄電池の基本構造・充電と放電の仕組み
蓄電池は、電極・有機電解液(硫酸など)・セパレータから構成されます。簡単にいうと、正極と負極による電流を利用して充電・放電する仕組みです。
家庭用蓄電池の種類によっても構造は異なりますが、ここでは主流のリチウムイオン蓄電池の仕組みをみてみましょう。
家庭用蓄電池は、電解液(硫酸)のなかに正極と負極の金属が入っている構造です。太陽光発電から流れてきた電気は、電解液のなかに電極の金属を溶け出させる析出という化学反応を活用して充電・放電されます。
具体的には、正極の電気が溶け出すと電気が充電され、反対に、負極の金属が溶け出すと放電されるシステムです。蓄電池は内部に電流を流すことで、電子を正極から負極・負極から正極へと行き来させて析出を起こします。この仕組みで、家庭用蓄電池は充電と放電を繰り返すことが可能です。
蓄電池の種類
蓄電池の種類によって、使用される材料や構造が異なります。家庭用蓄電池は、リチウムイオン蓄電池という構造が主流です。他には、鉛蓄電池・全固体蓄電池などがあります。3種類の蓄電池の特徴を表にまとめました。
種類 | 特徴 |
リチウムイオン蓄電池 | ・家庭用蓄電池でもっとも多いタイプ ・充電・放電が効率的 ・寿命は約10~15年 |
鉛蓄電池 | ・鉛板を使用する蓄電池 ・比較的安価 ・寿命は約5~7年 |
全固体電池 | ・開発や量産化が進めらる次世代蓄電池 ・固体材料で安全性が高い |
リチウムイオン蓄電池:高効率で長寿命
リチウムイオン蓄電池は、家庭用蓄電池として現在もっとも多く流通しています。そして、高効率で長持ちしやすい点が特徴です。
リチウムイオンの活発な移動によって、充電・放電がより効率的におこなえます。リチウムが持つ特性により、少ない重量で多くのエネルギーを蓄えられるからです。
さらに、一般的なリチウムイオン蓄電池の寿命は約10〜15年とされています。10年以上使うことができるので、コストパフォーマンスが高いといえるでしょう。
鉛蓄電池:低コストだが寿命が短い
鉛蓄電池は、歴史のある技術で価格が安いのがメリットです。
鉛蓄電池は、鉛の電極板と希硫酸の電解液を用いて製造されます。原料である鉛の価格が比較的安いため、リチウムイオン蓄電池などに比べて安い傾向です。また、鉛蓄電池は日本でもっとも歴史ある蓄電池で製造方法が確立されている点も、価格を抑えることにつながっています。
鉛蓄電池は、自動車のバッテリー、コンピューターなどの機器に多く使用される蓄電池です。寿命が約5~7年と短い(高率放電の場合)ため、家庭用蓄電池に用いられることはあまりありません。
ただし、最近ではリサイクルを前提として、鉛蓄電池の仕組みを利用した家庭用蓄電池も登場しています。
全固体電池:高安全性・長寿命な次世代技術
全固体電池は、固体電解質を使用した次世代の蓄電池です。液体電解質を使用しないため、漏液や発火のリスクが低く安全性が高い点がメリットです。
全固体電池は、正極・負極・電解質のすべてが固体の材料でできています。液体を利用しないため、発火や劣化、液漏れ、凍結といったリスクが少ない点が特長です。また、温度帯に関わらず利用できる点も評価されています。
全固体電池は現在開発や量産が進められている段階です。具体例として、トヨタ自動車が試作車で全固体電池を実用化したことで話題になりました。2023年には、出光興産との協業で全固体電池を量産化することを発表しています。今後さらなる普及が期待される蓄電池です。
家庭用蓄電池の主な種類とそれぞれの特徴
家庭用蓄電池は、ハイブリッド型と単機能型、全負荷型と特定負荷型に分類できます。導入する製品選びにもかかわるポイントなので、確認しておきましょう。
まずはそれぞれの種類と特徴を表にまとめました。
家庭用蓄電池の種類 | 特徴 | |
パワーコンディショナーのタイプ | ハイブリッド型 | ・パワーコンディショナー1台の設置でOK ・高効率に充電・放電 ・省スペースに設置可能 |
単機能型 | ・パワーコンディショナーを後付けするケースで用いる | |
停電時の電力供給のタイプ | 全負荷型 | ・停電時に家全体で電力供給を受けられる ・ある程度蓄電容量が必要 ・比較的高額 |
特定負荷型 | ・停電時の電力供給が特定の場所に限られる ・電力の節約が可能 ・比較的安価 |
この章では、それぞれの特徴を詳しく解説します。
ハイブリッド型と単機能型の違い
家庭用蓄電池は、ハイブリッド型と単機能型に分類されます。この2つの違いは、太陽光発電との連携方法によるものです。もっというと、必要なパワーコンディショナーの台数で分類されています。
パワーコンディショナーとは、太陽光発電で発電した電力や、蓄電池で充電した電力を、家庭で使用できる電力に変換する機械のことです。
まずハイブリッド型は、1台のパワーコンディショナーで太陽光発電・蓄電池を連携できます。電力のやり取りがよりスムーズで、機器がコンパクトな点がメリットです。新築住宅で太陽光発電と蓄電池を同時に導入する場合は、ハイブリッド型の蓄電池が適しています。
一方単機能型蓄電池は、蓄電池専用のパワコンとの連携が必要です。すでに太陽光発電を導入している場合は、単機能型蓄電池を選びましょう。
全負荷型と特定負荷型の違い
家庭用蓄電池は、非常時の電力供給の方法で全負荷型と特定負荷型に分けられます。
全負荷型は停電が起きた際、蓄電池から家全体に電力供給が可能です。一方特定負荷型では、特定のブレーカーにのみ電力が供給されます。
全負荷型の蓄電池なら、停電時でもすべてのスイッチやコンセントが使用可能です。しかし、ある程度大きい蓄電池容量が必要になります。そのぶん全負荷型のほうが販売価格は高くなりやすいです。
特定負荷型は、停電時の電力供給が一部のブレーカーに限られるため、電気が使えなくなる部屋や階層があります。
電力を供給するブレーカーは設置時に選択可能です。重要な機器(照明、冷蔵庫、通信機器など)が使えるブレーカーを選ぶことで、蓄電池内の限られた電力を有効的に使えるメリットがあります。
停電時に家庭用蓄電池を活用する3つのポイント

地震などの災害によって停電が起こったときにも、家庭用蓄電池は心強い味方となります。ここでは、非常時における蓄電池の動作や効果的な活用方法を解説します。
1.自動切り替えで即時に電力が供給される
多くの蓄電池は、停電時に自動で電力供給を開始する機能があります。停電が発生すると、自動で蓄電池からの電力に切り替わるため、安心感の高い機能です。
家庭用蓄電池は、常に電力の状態を監視し、放電と蓄電を繰り返しています。このシステムを活用して、停電などの異常が起きた際にも素早い対応が可能です。
なにもしなくても電気が蓄電池からの供給に切り替わるため、暗い室内を動いて操作する必要がありません。こどもや高齢者のいる家庭でも安心です。
2.家庭に適した容量の蓄電池を導入する
非常時に蓄電池からの電力を活用するには、適切な蓄電池を選ぶことも大切です。
一般的な家庭の電力消費量と適正な蓄電池容量の目安の表をご覧ください。
家族構成 | 電力消費量(1日) | 適正な蓄電池容量 |
1~2人暮らし | 約5~7kWh | 5~7kWh |
3~4人暮らし | 約10kWh | 8~12kWh |
5人以上 | 約15kWh | 12~15kWh |
もちろん、電力使用量や適切な蓄電池容量は家庭によって異なります。在宅勤務で日中だれかが家にいる家庭と、日中はだれも家にいない家庭など、生活によって消費電力にばらつきがあるためです。例えばペットを飼っている場合は、プラス1人分の電力を消費しているケースも珍しくありません。
家族構成やライフスタイルを考えて、家庭にあった蓄電池容量を選びましょう。
ジャパンライフアシストでは、ご家庭に適したメーカーや製品の提案をおこなっています。蓄電池や太陽光発電の導入を検討している方はぜひご相談ください。
3.災害時には優先順位をつけて電力を使用する
無計画に電力を使用していると、蓄電池の電力をすぐに使い切ってしまうかもしれません。特に災害による停電の場合は、長期間停電が起こる可能性もあるので、優先順位をつけて電力を使うことが大切です。
災害時は情報収集と安全確保が最優先になります。まずは、スマートフォンの充電やインターネット接続機器の電力など、情報源となるものの電力を優先的に考えましょう。テレビやラジオなども活用すると現状が把握しやすくなります。
また、停電は長期になる可能性もあるので、蓄電池の電力を効率的に使用する工夫も必要です。エアコンや電子レンジといった電力消費の大きい家電の使用は極力避けるなどして、計画的に利用しましょう。
太陽光発電と家庭用蓄電池を併用する4つのメリット

太陽光発電と蓄電池を組み合わせることでさまざまなメリットが得られます。ここでは、その連携方法と得られるメリットを4つ解説します。
メリット①日中の余剰電力をためて夜間に活用
太陽光発電は日中に多くの電力を生み出します。発電量によっては、日中の電力消費量を上回って発電できることも多いです。蓄電池があれば、その余剰電力を蓄えて夜間に使用できます。このように、発電した電力を効率的に利用できる点は蓄電池を導入するメリットです。
また、日中に発電してためた電力は停電時にも活用できます。太陽光発電だけでは日中発電している間の停電には備えられても、夜間の停電には対応できません。蓄電池を導入することで、どの時間帯の停電にも備えられるため安心です。
メリット②売電よりも自家消費で電気代を節約
売電価格の低下や電気料金の高騰により、太陽光発電の電力は売電よりも自家消費したほうがお得になるといわれています。より効率的に自家消費していくには蓄電池が必要です。
売電価格は固定価格買取制度(FIT)によって価格が定められています。売電価格は年々低下傾向にあり、2025年時点での価格は1kWhあたり15円(10kWh未満)です。これは2009年の4分の1程度にあたります。
それに加えて電気会社から購入する電気料金が上がっているため、いまは余剰電力を売るよりも自家消費したほうが経済的メリットが大きいです。蓄電池を導入して、日中だけでなく夜間も発電した電力を活用すれば、電気代の節約につながります。
メリット③HEMSでより効率的に電力を使用できる
HEMS(Home Energy Management System)は、家庭内のエネルギー消費量をグラフや数字で表示して管理しやすくするシステムです。モニターやパソコン、スマートフォンで簡単に確認できるようにして、エネルギーをより最適に活用することを目的としています。
蓄電池を導入すると、太陽光発電の発電量や蓄電池への充電量をリアルタイムで表示可能です。蓄電池のリモコンモニターで確認できるだけでなく、メーカーやモデルによってはスマートフォンのアプリでもチェックできます。
HEMSによって、発電状況や電力の使用状況の管理がより手軽になります。例えば、電気料金が高い時間帯には蓄電池から電力を供給し、安価な時間に充電するといった使い方ができるようになります。さらなる電気使用量の削減も期待できるでしょう。
メリット④VPP(Virtual Power Plant)としての活用も可能
最近、蓄電池はVPPとしての活用も注目されています。VPP(Virtual Power Plant)は、仮想発電所と訳すことができます。複数の小規模な発電・蓄電設備を統合して、大規模な発電所のように機能させるシステムです。
個人の家庭用蓄電池もVPPの一部として参加できます。電力需要のピーク時にも蓄電池から電力を用いることで、安定した電力供給が可能です。
現状、VPPは構想・実験段階にあります。VPPに参加するメリットは、いまのところ蓄電池導入による補助金にとどまります。しかし今後は、電力会社などによる報酬でVPPが副業としても認められるかもしれません。
蓄電池の最新技術と今後の見通し

コラムの終わりに、日々進化する蓄電池の最新の技術動向と今後の見通しをご紹介します。
全固体電池の実用化と普及
全固体電池は次世代の蓄電池として期待されています。現在は開発段階で実用化が目指されている状態ですが、今後の発展が注目の蓄電池です。
全固体電池は、材料がすべて固体でできています。それによりエネルギー密度が高く、安全性にも優れていることがメリットです。
現在はトヨタ自動車などの企業が中心となって、幅広い分野での活用が見込まれています。今後の見通しでは家庭用蓄電池への導入も予想されています。家庭用蓄電池に全固体電池が導入されると、さらに長寿命で大容量の蓄電池が開発されるかもしれません。
AIを活用した最適な電力管理
AI技術の進化により、太陽光発電や蓄電池のエネルギー管理が手軽になりました。AIが電力使用パターンを学習して充電・放電を切り替えることで、効率的に電力を使用できます。
最近では、このようなAI技術を用いたAI付き蓄電池も登場しました。AI付き蓄電池では、気象予報による発電量予測、日々のデータを分析した電力消費量予測などが用いられています。
長州産業の「スマートPVマルチ」や、ニチコンの「ESS-U4M1」、パナソニックの「AiSEG2」などがAI付き蓄電池の例です。AIが充電・放電を効率的におこなうので、手間をかけずに電気代の節約も期待できます。
電気自動車(EV)との連携強化
電気自動車と蓄電池の連携も進んでいます。EVは環境にやさしいとして注目される自動車です。しかし、太陽光発電だけの場合、発電されていない時間帯や天候が悪い日に充電すると、電気使用量が増えてしまうというデメリットがありました。
EVと蓄電池を組み合わせると、発電した電力を効率的に使用することができます。例えば、日中に蓄電池にためた電力を使えば、夜間の充電も可能です。また、EVに充電することで、EVバッテリーを万一の備えとしても活用できます。
EVと連携できるトライブリッドシステムを搭載した蓄電池としては、長州産業の「スマートPVエボ」、ニチコンの「ESS-T3シリーズ」や、パナソニックの「eneplat」がおすすめです。
2025年最新!国や自治体の補助金情報
蓄電池導入を促進するため、国や自治体から補助金が提供されています。補助金制度を利用して、お得に蓄電池を導入しましょう。
2025年度の補助金情報も随時公開されています。例えば、国土交通省の「子育てグリーン住宅支援事業」では、蓄電池の設置で64,000円の補助が受けられることが発表されました。ただしこの補助を受けるには、蓄電池の導入以外にも建物の断熱性能を向上させるリフォームも必要です。
また、「DR家庭用蓄電池事業」では、蓄電池機器代や工事費用の補助が最大60万円受けられます。他にも、独自の補助金事業をおこなう自治体もあるので、最新の情報をチェックしましょう。
ジャパンライフアシストでは、補助金の申請手続きを代行しています。面倒で複雑な手続きも任せられるので、はじめての方でも安心です。太陽光発電や蓄電池の導入を検討している方は、ぜひ一度相談してください!
まとめ

家庭用蓄電池は、太陽光発電でつくった電気を、電流の力を使って充電・放電しています。家庭用蓄電池を導入することで、電力の効率的に利用できる・停電時のバックアップができるなど、多くのメリットがあります。
また、自分のニーズに合った蓄電池を選ぶことで、電気代の節約も可能です。太陽光発電や蓄電池は発展を続けており、今後さらに高性能で環境にやさしい機器が生まれる可能性もあります。
ジャパンライフアシストでは、各家庭に適した太陽光発電・蓄電池の提案が可能です。家庭用蓄電池の仕組みや活用方法、補助金関連の悩みなどへの相談にも真摯に対応します。ぜひお問い合わせください。