家庭用蓄電池の導入は元が取れない?費用対効果と費用回収シミュレーション

近年、再生可能エネルギーへの関心が高まり、家庭用蓄電池の導入を検討するご家庭が増えています。一方で、「初期費用が高くてハードルが高い」「元が取れないのではないか」といった不安から、導入に踏み切れない方も多いのが現状です。
このコラムでは、家庭用蓄電池の費用対効果や費用回収のシミュレーションを通じて、家庭用蓄電池によくある疑問や不安にお答えします。
蓄電池の導入で本当に元が取れるのか、具体的な数値や公的機関のデータを交えて解説しますので、導入を迷っている方はぜひ参考にしてみてください。
家庭用蓄電池の導入は元が取れないといわれる理由

多くの方が家庭用蓄電池の導入をためらう理由として、「元が取れないのではないか」という疑問があげられます。
なぜそのように考えられているのか、以下で詳しく説明します。
投資回収期間が長いから
家庭用蓄電池の初期費用は比較的高額なので、節約した電気代だけでその費用を回収するには長い期間がかかります。
一般的に、蓄電池の寿命は10~15年とされているので、この期間内に初期費用を回収できるかが大きなポイントとなるでしょう。
実際、経済産業省の試算によると、太陽光発電と蓄電池を導入したときの投資回収年数は、10年または15年であることがわかっています。
また、節約できる電気料金だけで初期費用を回収しようと考えると、家庭の電気使用状況や地域の電気料金によっては、さらに長い期間が必要になるケースもあります。そのため、多くの方が「元を取るのは難しい」と感じて、導入をためらってしまうのです。
※出典:経済産業省「ストレージパリティの達成に向けた価格水準と導入見通しについて」
電力価格の変動が投資回収へ影響するから
電力価格は年々変動しているので、その影響で費用回収計画が思ったように進まない場合もあるでしょう。特に「買電価格」が下がると、蓄電池で節約できる金額も減少してしまいます。
電力価格の変動は、蓄電池の費用対効果に直接影響を与えます。そのため、蓄電池を導入した当初の見込みよりもメリットを感じにくくなる可能性は、十分に考えられるのです。
実際、経済産業省の資料によると、2023年12月から2024年3月におけるシステムプライス(※)は、前年同時期と比較して低い水準で推移していることが示されました。将来的な電力価格を正確に予測することが難しい不確実性も、「蓄電池を導入しても元が取れない」と感じる大きな要因のひとつになっているのです。
(※)電力の卸売市場において、需要と供給のバランスで決定される電気の取引価格
※出典:経済産業省「今冬(2023年12月 – 2024年3月)のスポット市場価格の動向等について」
初期費用の高さとランニングコストに不安があるから
家庭用蓄電池の初期費用は、平均して100万円以上とかなり高額です。さらに、定期的なメンテナンスや部品交換といったランニングコストもかかります。
こうした費用を考えると、「初期費用だけでなく、その後の維持費も負担になるのでは?」と感じてしまうのは当然のことです。導入後にかかるランニングコストの不安も、蓄電池をためらう大きな理由のひとつになっています。
蓄電池のコスト回収シミュレーション

家庭用蓄電池の費用対効果を考える際、具体的にどのくらいの期間で費用が回収できるのかは重要なポイントとなります。
ここでは、具体的な数値を用いてシミュレーションしてみましょう。
初期費用とランニングコスト
まず、初期費用から考えていきましょう。
経済産業省の調査によると、家庭用蓄電池の平均システム導入費(システム価格と工事費の合算)は、以下のとおりであることがわかっています。
蓄電容量 | kWhあたりの平均導入費 |
5kWh | 23.3万円/kWh |
5~10kWh未満 | 18.5万円/kWh |
10kWh以上 | 15.9万円/kWh |
以上から、一般的な家庭で導入される容量5kWhの蓄電池の場合、約93万円の費用がかかる計算になります。
次に、年間のランニングコストも考慮しなければいけません。メンテナンス費用や電気代などを含めて、年間コストを約2万円と見積もります。これらの費用を合計すると、10年間で約113万円のコストがかかる計算になります。
※出典:経済産業省「蓄電システムをめぐる現状認識」
電気代削減効果の具体的な数値
次に、蓄電池を導入すると、実際にどれくらい電気代が削減できるのかを具体的にみていきましょう。

今回は、京セラ株式会社が提供している簡単シミュレーションツールを使って、容量5kWhの蓄電池を東京都の戸建てに設置したときを想定して試算してみました。
1か月あたりの電気代が1万5,000円のご家庭の場合、年間で約13万6,000円の電気料金が節約できることになります。これを10年間で考えると、合計で約136万円の節約が見込めます。
ただし、この数値はご家庭ごとの電力消費状況や契約している電気料金プランなどによって変動するため、あくまでも目安として参考にしてみてください。
売電収入と投資回収期間の目安
さらに、余った電力を電力会社に売ることで収入を得ることも可能です。
シミュレーションによると、1年間の売電金額は約6万5,000円となりました。10年間では、65万円の収入を得られることになります。
電気代削減額と売電収入を合計すると、10年間で約201万円の利益です。初期費用とランニングコストの合計が113万円ですから、差し引きで88万円の利益が発生することになります。
この試算を見てみると、10年前後で十分に投資コストを回収することは可能であることがわかります。ただし、今回のシミュレーションは、あくまで一般的な目安としての簡易的な試算です。
実際の節約効果は、ご家庭ごとの電力使用状況や電気料金プラン、蓄電池の性能、設置環境、地域などさまざまな要素によって大きく変動します。導入を検討する際は、専門の業者に相談し、ご自宅の状況に合った具体的なシミュレーションをおこないましょう。
蓄電池の導入で元を取るためのポイント

蓄電池の導入で元を取るには、いくつかのポイントに注意する必要があります。
以下では、その具体的なポイントを紹介します。
最適なシステムと蓄電容量を知っておく
蓄電池を導入する際は、自宅の電力消費量やライフスタイルに合った蓄電容量を選ぶことが重要です。容量が大きすぎると初期費用が高くなってしまいますし、小さすぎると十分な電力を蓄えることができなくなるためです。
一般的な家庭の場合、推奨される蓄電池の容量は5~7kWh前後だとされています。具体的な容量については、普段の電気の使い方や家族構成なども考慮して検討しましょう。
ご家庭に最適な容量を選ぶことで、蓄電池の費用対効果を高めることが可能です。
家庭用蓄電池の補助金を活用する
蓄電池の導入には初期費用がかかりますが、国や自治体の補助金を活用することで、負担を軽減することが可能です。
例えば、SII(一般社団法人環境共創イニシアチブ)の「令和5年度 蓄電池のDR補助金」では、最大60万円の補助金を受けられました。他にも、各都道府県や市区町村が独自に蓄電池導入の補助金を設けている場合があります。
このような補助金を利用すると、費用回収期間を大幅に短縮できます。補助金制度は年度ごとに内容が変わるので、導入を検討する際は最新の情報を確認し、早めに申請手続きを進めることが大切です。
※出典:SII(一般社団法人環境共創イニシアチブ)「令和6年度補正 家庭・業務産業用蓄電システム導入支援事業」
信頼できる施工業者を見つける
蓄電池の導入効果を最大限に引き出すには、適切な価格で高品質な施工をしてくれる業者を選ぶことが大切です。施工が不適切だと、性能が十分発揮されなかったり故障やトラブルの原因になったりする可能性があるためです。
施工業者を選ぶ際は、国土交通省の『建設業者・宅建業者等企業情報検索システム』など公的な情報源を活用して、信頼できる業者を見つけましょう。また、複数の業者から見積もりを取って比較することで、適正な価格やサービス内容を把握しやすくなります。
蓄電池導入による長期的なメリット

費用対効果以外にも、蓄電池の導入にはさまざまなメリットがあります。
ここでは、長期的な視点で蓄電池を活用する利点を紹介します。
環境貢献とエネルギー自給自足の実現
蓄電池を導入すると、再生可能エネルギーを効率的に自宅で使えるようになります。これによって、化石燃料の使用量が減り、CO₂排出量の削減に貢献することが可能です。
東京都地球温暖化防止活動推進センターによると、火力発電を太陽光発電に置き換えると1kWhあたり約650gのCO2を減らせることが示されています。
1kWの太陽光発電システムの年間発電量は約1,000kWhといわれているので、5kWの太陽光発電の年間発電量は5,000kWh前後です。つまり、年間で650g×5,000kWh=3,250kg前後のCO2削減が見込まれるのです。
杉の木1本あたりの年間CO2吸収量は平均14kgなので、約232本分の年間CO2吸収量に相当します。
※出典:クール・ネット東京「太陽光発電システム(太陽光発電システムとは)」
災害時への備えとしての安心感
日本は地震や台風などの自然災害が多く、停電のリスクも高い国です。電力広域的運営推進機関のデータでは、北陸や九州などの一部エリアで豪雨や台風などによる停電件数が増加傾向にあることが示されており、災害に備える重要性が高まっています。
蓄電池があれば、停電したときにも電力を確保できるので、最低限の生活を維持することが可能です。蓄電池を導入することで、非常時の安心感を得られるだけでなく、災害時でも普段と変わらない暮らしを守る手助けになります。
※出典:電力広域的運営推進機関「電気の質に関する報告書」
住宅の資産価値向上への影響
蓄電池を導入することで、住宅が「エコ住宅」として評価され、将来的な資産価値が向上する可能性があります。実際、不動産市場でも省エネ性能の高い設備が評価の対象となる傾向が強まってきています。
また近年は、省エネ性能が高い住宅ほど住宅ローンの金利優遇を受けられるケースも増えており、蓄電池の導入が間接的に住宅購入時の経済的メリットにつながる可能性もあります。そのため、蓄電池の導入は将来的な資産価値を高める有効な手段であると考えられるのです。
まとめ

家庭用蓄電池を導入するときは高い初期費用がかかるため、投資したコストを回収できるかに不安に感じてしまうのは無理もありません。
しかし、自宅に合ったシステムを選ぶことや補助金をうまく活用すること、信頼できる業者を選ぶことで、十分に費用対効果を高めることが可能です。
さらに、蓄電池の導入は環境貢献や災害時の備え、そして住宅の資産価値向上など、長期的に見ても大きなメリットがあります。
ジャパンライフアシストでは、ご家庭にあった太陽光発電や蓄電池の導入プランをご提案しますので、ぜひお気軽にお問合せください!